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Posted by ミリタリーブログ at

2008年03月02日

BDU 亜熱帯仕様 80年代~90年代初期

BDU Trousers Tropical 1980's~Early 90's
~Woodland Camo Ripstop material~



アメリカ軍が全軍に配備したウッドランド迷彩は1980年代に入って本格的な支給が始まった。ソビエトをはじめとする東ヨーロッパのイースタンブロック、ワルシャワ機構とも言うね、と対峙していた関係上、ヨーロッパに駐留するアメリカ軍に優先的に支給され始めたと言われるが、今ほど情報が迅速に伝わらなかった当時の話なので確たる証拠はない。
ともあれ、ウッドランドがヨーロッパの針葉樹の多い地域の活動に適した迷彩服であったことは良く知られるところだ。
 アジア地域でも配備は進んだが、亜熱帯用リップストップ生地のウッドランドBDUはNYCO(ナイロンコットン混紡)生地よりやや遅れて登場したように記憶している。
リップストップ生地のウッドランドはアジア圏の温暖な地域での効果を狙い、迷彩に含まれる下地のパフや緑が明るく色調を変えており、それまで目にしていたNYCO生地のものと違っていた為、私は違和感を感じたことを覚えている。
上の写真は少し分かりづらいのだけれども、同じリップストップでありながらパフや緑の配合が異なっている。どちらも同じ未使用品で80年代中期と後期の物だがアメリカ軍内での試行錯誤が読み取れるように思う。



上の二枚の写真の違いが分かるだろうか?写真上のトラウザーの裾紐はコットン製、旧来のジャングルファティーグやERDL(リーフ)に採用されていた物と同じ、写真下はおなじみナイロンの平紐を採用している。ウッドランドBDUにコットン紐は使用していないと言うのが定説になりつつあるのだが実は初期の亜熱帯用には採用している。勿論、M65ウッドランドパンツにはコットンも採用している。


膝の動きに対応するように、マチがとってある。ベトナム戦争時期にもマチはとってあるが初期のリップストップ・ウッドランドはマチの取り方がさらに大きい。現在生産されるBDUではこのマチは省略されている。整列時膝部分にたわみが発生し、見た目が悪いと感じたか、生産性を考慮して省略したと思う。フィールドで動き回ることを考えれば、これはあったほうが良いことは言うまでもない。


フロントはボタン留めになっている。ベトナム戦争末期ジャングルファティーグで一旦ジッパーを採用したが、泥や砂を噛み込み破損した場合に補修がきかない事などを受け、70年代中盤からERDLで見直された。現在ではジッパーの性能が向上したこと等でACUはジッパーを採用していると思われる。


ウッドランドから後ろポケットのフラップボタンは二個に改良されている。内容物の紛失を防ぐ配慮であろう。ウエストの調整テープがこの時代はかなり余裕を持って長く作られている事にも注意。


現在では省略されることの多いフロント部分のフラップ。90年代後期の製作年度の物にはまず付いていることはないと思う。
これも使用される事が少ない部分を見直し、生産性を上げるための省略と思う。


リップストップBDUには必ず付くようになった補強、膝にも同様の補強が付く。傷みやすい部分だけに現場の要求によって追加された部分だが、私自体はこれがあまりありがたいとは思えないのです。濡れると乾きにくいし、使用していると補強部分だけ目立つしね。


対比用に持ってきた3カラーデザート、2002年製 同じサイズです。ウエストの調整テープがウッドランドの方が長いのが分かる?ズボンの後ろポケットの位置もウッドランドの方が若干低い。つまりウエストラインはウッドランド(90年代型)の方が約1.5cm高く設定されている。カッティングに改良が加えられていると言うこと。



デザートの膝部分にマチがなく、膝の補強部分が短くなって、ポケットの下までしかないのが分かる。


初期のBDUには今にない凝った作りと機の的な配慮がなされていたことが分かると思う。
特にデザートはイラク侵攻当初、展開部隊の必要数を確保するのが難しかったようだ。
戦時に必要数を確保する為、生産性を考慮して同量の生地からより多くの戦闘服を作り出す努力は今までどの軍隊でも行われてきた。また兵士からの要求に答え、徐々に改良を加えながら戦闘服は進化してゆく物であることはこれからも同じことだと思う。機能を落として改悪となるケースもある。
既にACUは砂漠での活動用に砂をかみやすいベロクロ部分を新型に変えている。こうゆう人知れず行われる改良や考え方、要求の変化と言うのも面白いんだよね。

Text By TAC
  
タグ :BDU